給水・給湯・排水管の変遷

 古くからマンション等の集合住宅で設備配管に鋼管が使われて来たのは設備配管が防火区画を貫通させる際に不燃の材料で作る必要性があるためでした。昭和の時代では塩ビ製の不燃材を作ることが難しく、主に鉄で出来た鋼管が使われて来ました。不燃の鋼管(鉄管)には腐食(サビ)の問題がついて回り、設備配管は防腐との闘いの歴史となります。

給水管

 マンションが登場し始めた昭和30年代から鉄の管に亜鉛メッキを施した「水配管用亜鉛メッキ鋼管(SGPW)」を使用してきたが、継手のネジ切り部分でメッキが剥がれてそこから錆が出て、赤水や漏水の原因となることが頻発する様になった。そこで昭和40年代から継手の部分を塩化ビニールでコーティングさせた「コーティング継手」や鋼管内部を樹脂でコーティングした「硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-VB)」が普及する様になってきた。コーティング継手でも継手の腐食が防げなかった為、昭和60年代から「管端防食継手」が登場するが、それでも継手の防食を完全に抑えることは施工精度の問題で難しく、鋼管を使用して腐食(錆)の問題を抜本的に解決するのは難しかった。

 鋼管での給水管とは別に、平成に入ってからは耐久性、耐食性、施工性の優れた樹脂の「架橋ポリエチレン管(PEX)(白色、若干硬い)」や「ポリブデン管(PB)(ベージュ色、若干柔らかい)」が採用される様になり、阪神淡路大震災を契機に共用部分では「高密度ポリエチレン管(PE)(青色、硬く電気融着で接合させる)」が採用される様になってきた。また、給水用の塩化ビニール管は古くから使われているが、住宅では通常の「硬質塩化ビニル管(VP、灰色)」ではなく耐衝撃性に優れた「耐衝撃性硬質塩化ビニル管(HIVP、灰青色)」が使われることが今では一般的となっている。

給湯管

 給湯管は長く「給湯用銅管(CuP)」が使用されてきたが、今では給湯管も「架橋ポリエチレン管(PEX)」等に変わる様になってきている。「給湯用銅管(CuP)」は白い断熱材で被覆されているのに対して、「架橋ポリエチレン管(PEX)」は給湯用は赤色の、給水用は青色の「専用のさや管」や「断熱材」で被覆されている物を使用する。

 給湯用の塩化ビニール管として「耐熱塩化ビニール管(HTVP、赤茶色)」も存在するが、現在はほぼ「架橋ポリエチレン管(PEX)」等が給湯管として使用されている。なお、食洗機などの高温の排水が流れる部分には部分的に「耐熱塩化ビニール管(HTVP)」が使われる事が多い。

排水管

 排水管は古くから硬質塩化ビニル管(VP)が使われてきたが、建築基準法により防火区画を貫通する部分は防火区画より1m以内は不燃材料で仕上げなくてはならない為、古くは鋼管がや耐火二層管(塩化ビニルを不燃材で覆った配管、灰色)が近年は耐火性硬質塩化ビニル管(緑色)が使われる様になった。(継手も同様)

 鋼管の給水管が腐食の問題で耐久性に難がある反面、排水管に関しては素材それ自体の耐久性は非常に高く、また接続部分の接着剤の劣化も考慮する必要はない程度の耐久性がある。だが、施工精度の問題で配管継手の内側部分に凹凸が出来てしまうと、その部分で排せつ物が引っ掛かり管の詰まりの原因となるので、給水管の交換のタイミングで排水管も交換する方が望ましい。

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